耳を澄ますとき

だれかとの時間、こころに染み入る ことばの記録

「あなたの中に死んでいきたい」という想いさえも、熔けゆく深みへ... 影舞 円坐、そして未二観 篇

 

 

「あなたの中に、死んでいきたい」

 

わずかに声を震わせながら、でもはっきりと、彼女がそう口にした光景を覚えている。

 

ふたりの人間が、たがいに一本の指先だけをふれあわせて舞う “影舞” のとき、そんなふうに感じたのだと彼女は話してくれた。その切実さと、どこか官能的な悦びをも感じさせる声の響きに、わたしの心臓はドクンと脈打った。こんな言葉を、真剣に、だれかに伝えられる姿にシビレた。

 

わたしにはちょっと面倒くさいところがあって、「好き」とか「愛してる」と直接伝え合うより、どちらかというと、それこそ「あなたの中に、死んでいきたい」みたいに、その人の正体が露(あらわ)になるというか、隠しきれない汗の匂いまで漂ってきそうな生ぐさい表現に、よほど自他ともへの愛の粋(すい)やタントリックな香りを感じたりする。

 

 そして、男と女が影舞の時空に熔けていくこんな瞬間にも、わたしはタントリックな芳しさを感じずにはいられない。

 

※実は「影舞タントラ説研究会」を4年前から一人で発足中(笑)

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「あなたとわたしの境い目は 分別熔ける重力場 その坂越えれば無分別」と橋本久仁彦さんが『影舞円坐和讃』で詠まれた、その光景を彷彿とさせる影舞の美しさ

 

タントリックな瞬間って、わたしにとっては日常の細部にあって、必ずしも瞑想しているときだけに起こるものじゃない。一瞬でも自我なりマインドなりを忘れ、日常のリアリティの中で目の前の存在に文字どおり “一心” に向かっている状態がベースになるんじゃないかと。

 

性的な場面だけでなく、料理でも洗濯でも顔を洗っているときでも同じ。そうした日常の行為の連続性から五感の扉が開き、だれかとのふれあいの中にも自己が熔けていくありようを感じやすくなっていくのかもしれない。わたしがイタリアまで行って参加しているグループを主催する タントラライフ のキャッチコピーは “ two becomes one ”  なのだけど、この「ふたりがひとつになる」という感覚は、 たぶんこんなニュアンスを表現しているのだと思う。

 

 

“一期一会の終の旅

うらをみせ おもてをみせ

散る我ら

華の道連れ逢坂の

ふたりで歩くひとり旅

影舞 円坐の白き道 ”

 

(橋本久仁彦『影舞 円坐 和讃』より) 

 

 

そんなタントラ探求者でもあるわたしにとって、こうした詩(うた)を編む橋本久仁彦さんが守る場は本能的に惹かれるのだ。人間関係において、生身の人間どうしの深いふれあいに、どれほど傷つこうと向かっていく好奇心と勇気をくれる。

 

 

橋本久仁彦さんは教育現場で「教えない授業」を10年実践されたのち、数十年にわたり欧米のさまざまなカウンセリングやセラピーアプローチを探求されてきた。なかでも、まさに生身の人間どうしの有機的な“出会い”を見届けていく非構成的エンカウンターグループにかけてこられた時間と熱量は、わたしなどの想像の域を超える。近年ではそのエンカウンターの場でさえ「やりきった上でなお、肚落ちしていない自分がいた」(ご本人談)という。そして、より日本人としての感性に立ち還って人間主体の世界観を一度手放し、生活環境(自然)や人生の予期せぬ出来事の中でこそ、初めて生かされる人間の有り様を見つめていこうとする独自の場づくりをデザインしてこられた。

 

それが【円坐】という場であり、そこに集う人たちがたどる道往きを見守る者を守人(もりびと/エンカウンターグループでいえばファシリテーター的立場)と呼び、その在り方として大切な、目の前の人の話を“そのまま聞く”ことの研鑽となるミニカウンセリング(現在は「未二観」と呼ばれている)のクラスも提供されてきた。

 

ミニカウンセリングをめぐる思いは、ちょうど一年前の記事にも書かせてもらったので、よろしかったら、どうぞ。

 

ajanta-miwa.hatenablog.com

 

 

そんな橋本さんとの3年目となる半年間のミニカウンセリング・コースの質が、今年から舞台を鎌倉に移して変わっていく。昨夏、還暦を迎えられた橋本さんご自身、一方的に受講生にカウンセリングやグループ・ファシリテーションのノウハウを教える講師的在り方ではなく、わたしたちとともに目の前にいる人の全存在を “めぐり”  “まわり”  “かえる(還る)”という在り方へと移ってきている、とおっしゃる。

 

 

今までの “ 研鑽” し “辿る” という

一方的な人への向かい方から

その方(「その人」の意ですが「方」には

方位=特定の広がりという実質があります)を

「めぐり」「まわり」「かえる」という在り方へ

僕の心境が移っています。

もうすぐ母のようにみんなの前からいなくなる

(著者注:一昨年、橋本さんはお母様を看取られた)

消えて「逝く私」の立場から

人の言葉を「辿る」と

それはそのまま帰り道(還り道)になります。

『影舞 円坐 和讃』に書きましたように

「あなたが私の還る空」となります。

60歳以降は若い人に合わせる物言いや態度はやめて

直接的に和讃の言葉や

僕のその時の直観や心象を用いて

未二観や影舞、円坐を表現していきたいです。

 

 

 

ミニカウンセリングも単に言葉を辿るのではなく、もっと目の前の人を立体的にとらえながら、その唯一無二の存在から発せられる声(言葉にならない声までも)に耳を澄ましていく、という聞き手や守人の在り方とは、どういうものなのか。

 

海辺や神社仏閣など、鎌倉の風光明媚で歴史的な土地にも足を運び、毎回1泊2日の合宿スタイルで半年間、ご縁あって集った8名の男女とともに、たっぷりと影舞と円坐の時間もとりながら探求していきます。

 

たとえばそう、影舞や円坐で「あなたの中に、死んでいきたい」という情がわくこと自体すごいことだけれど、そうした想いさえも、向かい合うふたりの間に熔けていくような時空の深みへと、あなたといろんなところを環(めぐり)ながら「環の稽古」という旅をしてみたい.....そんな思いでいます。

 

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初夏から秋にかけての鎌倉の自然も感じながら影舞 円坐を探求していきましょう。

 

【2019年度 橋本久仁彦とともに鎌倉で過ごす12日間

ミニカウンセリング(未二観)と円坐・影舞 “環の稽古” 合宿コース】

 

第1回 5月24日(金)〜 5月25日(土)

 

第2回 6月28日(金)〜6月29日(土)

 

第3回 7月19日(金)〜7月20日(土)

 

第4回 8月30日(金)〜8月31日(土)

 

第5回 9月20日(金)〜9月21日(土)

 

第6回 10月18日(金)〜10月19日(土) 

 

男女8名限定(会場の古民家のスペース上、増員はありません)先着順で定員になり次第、募集を閉め切ります。少人数で、濃密に、ミニカン(未二観)影舞 円坐 から起こる全てを味わってまいりましょう。

 

※ こちらのイベントは終了しました。